税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(55)

今回は、「美術骨とう品販売業」です。
デパートなどで開催される「展示会」などを見ていますと、相当高額な商品から数万円程度の美術品が売買されていますが、いずれも多くの人々が楽しげに品定めをして気に入ったものを買っています。またTV人気番組の「なんでも鑑定団」では、当初思っていたほどには価値がなかったり、騙されたりするケースもありますが、多くの方が美術品や骨とう品を購入し、値段が上がることや保有そのものに価値を見いだしているように感じます。また、六本木に新しい国立新美術館が完成しましたが、相当広い面積が確保されており、日本人の美術好きを物語るものだと思います。
さて、このような美術骨とう品販売業を行うには、古物営業法に基づく「古物商許可証」(都道府県公安委員会の許可)が必要になります。また、行商やせり売りを行うには、「古物行商許可証」を携帯しなければならないことになっています。この業種は、かなりの修行期間が必要とされ、一通り美術品に対する価値評価を適切に行えるいわゆる鑑定眼が必要となります。更に、高価品を取り扱うための多額の開業資金が必要なため、業者の数自体は多くありません。扱う品物によって、絵画商、茶道具商、鑑賞陶器商(壺、皿、鉢、茶碗等)、刀剣商、宝飾商、諸美術商(様々な商品を扱う)に分けられます。
さて、ではこのような美術骨とう品販売業はどのようにして調査するのでしょうか。
この業種は、一般に売上、仕入とも上様、仮名の取引が多く、また、受託販売商品については、預り証の発行をしないケースが多く、委託者の住所、氏名も不明であることから、取引の流れを把握することが困難であるといわれています。
そこで、調査に着手する前に、過去の申告データを分析し、各年分毎の荒利益率、経費率、棚卸し回転率、在庫の内容分析等を行うのはもちろん、過去にあった非違事項やそれらに関連する項目に気になることがないかチェックします。また、取引資料の収集に努め、場合によっては内定調査を実施する事もあります。
実地調査に際しては、まず保管が義務付けられている古物台帳(古物台帳は、売買もしくは交換のため、または売却もしくは交換の委託により古物を譲り受け、または譲り渡したときは、そのつど、その帳簿に、①取引の年月日、②古物の品目及び数量、③古物の特徴、④相手方の住所、氏名、職業、年齢及び特徴を記載しなければならないことになっています。)と棚卸商品(棚卸台帳の商品ではなく、店舗や倉庫に実際にある商品との照合)との突き合わせです。この段階で現物がないものや、現物があるのに記帳のないものは厳しくチェックします。これらの不突合については、経営者から確認書を取り、特に預り証品については、簿外の自己商品を偽装しているケースが多いので、相手先に確認します。また、仕入、売上で仮名、上様取引は、取引先を明らかにするよう追及します。いずれにしてもこの様な取引の際に裏口座からの入金、簿外商品の販売が行われるので厳しくチェックします。一方、運送保険料や運送料の請求書等から、運搬先、販売商品及び取引内容が判明するケースも多く、これらのチェックの見逃せません。

一覧に戻る

ページトップへ

石川税務会計事務所

〒102-0084 東京都千代田区二番町5-2 麹町駅プラザ803
TEL: 03-5211-1541
FAX: 03-5211-0777
info@ishikawa-taxoffice.com