税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(54)

今回は、「文房具業」です。
普段の事務の中で、パソコンなどのIT化以外にも、事務机の機能的なものとか文書のファイル化等事務処理の合理化を進めるものが増えています。また、家庭内にも機能的でカラフルな文具が増えています。今日はそのような文具店を取り上げます。
文房具店は、事務用文具、学用文具、家庭用文具、紙類、紙工品類、美術材料及びその他の文具類を販売するものをいいますが、近年、事務の機械化IT化、生活様式の多様化のより、事務機器、事務用家具の需要が顕著で、特にパソコン周りの製品の伸びが高いようです。
この業種の製品は、教育産業や事務機器産業に関連し、ホビー商品などの余暇産業も含み比較的好況ですが、商品の多種類や規模の零細性など問題点も多く存在します。文房具店の取扱商品は、ボールペン、ノートなどの筆記具、一般文房具から事務用機械としての電卓やテプラー、コピー機までその範囲は広く、大手メーカー1社だけでも4,000種類以上あると言われ、全体では約1万点にも達するため、仕入れと商品管理が経営上重要であると言われています。
また、立地条件によって販売形態、商品構成、店舗規模が大きく変わる傾向にあります。
例えば、ビジネス街に位置する都市型ですと、規模も大きく、販売形態は店舗販売よりも外交販売、商品構成は事務機、事務用品が中心となります。地方都市型では、準ビジネス街や商店街に立地し、店舗販売と外交販売の双方を行い、品揃えはかなり広範囲なものになります。一方郊外型では、住宅地や学校前に位置し、店舗販売が主体で、家庭用、学習用文具を販売し、書籍や日用雑貨との兼営も多く見られます。
さて、ではこのような文房具業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、事前に差益率、所得率、経費率及び商品回転率等の分析比率を調べ、標準とどう違うのかチェックし、問題があると思われる勘定科目を洗い出します。また、時系列的な売上、利益率の推移を過去のデータとも比較し、おかしいと思われる時期を選定しておきます。学校用品中心の文具店では、一般に年末及び学期始めに最も売上が多く、特に3~4月は通常月の2倍程度の売上を示し、学校の夏休みを迎える7~8月は最も少ないと言われ、また、事務用品を扱い、かつ、外交販売のウエイトが多い店舗では、年を通じ平均化すると言われています。この様な状況と明らかに違う動きをしている月を重点的にチェックするわけです。
売上については、少数多品種で現金売上が主体のため、レジを巡る不正が多く見られます。
レジペーパーの打直しや一定時間後の売上はレジを打たない事による売上除外です。これには内定調査や、除外現金の現況調査での把握、除外仕入を把握してからの追及等で対応します。また、除外した売上は銀行員に預けて仮名預金にするケースが多いので、担当外務員からの聞き取りや訪問日誌の開示を厳しく行います。特定の掛売りに対しては決済状況も含め精査します。
仕入については、大部分は掛仕入のため仕切書、納品書、請求書等の原始記録を丹念にチェックし、記帳漏れや架空仕入の有無を調べます。また、直近の仕入と在庫商品と照合し、仕入除外が無いかチェックします。仕入を除外するのは、売上を除外しかつ利益率が低下しないためなので、売上も除外しているケースがほとんどです。
棚卸商品のチェックは、品種が多いので主要商品を数種選んで調査します。

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