税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(53)

今回は、「ソフトウェア業」です。
パソコンの普及と各種ネットワークシステムの高度化により、ソフトウェア開発の需要が増大しています。また銀行等の金融機関や薬品業界を始めとしたM&Aの嵐は、基幹システムの統合が不可欠でそのための委託ソフト開発を急増させています。更に、家電製品のネットワーク化、携帯電話の高機能化、自動車のナビ機能始めとする情報システム化等は、システムエンジニア等情報技術者の慢性的な人材不足を生じさせています。
ソフトウェア業は、基本的に必要なプログラムを提供(ソフトウェア開発、プログラム作成)することを主業務としますが、その他に要員派遣、要員教育、セキュリティの分野も含まれます。従って、最もウェイトの高いソフトウェア開発でも、その契約内容から見ると請負契約から要員派遣まで様々です。
また、この業界の主な収益項目は以下のようなものです。ソフト開発、ソフト販売(パッケージ販売)、ソフト開発要員派遣及びオペレータ派遣、調査研究、受託計算及び機械時間貸し。
業界の特色としては、(1)メーカー、ユーザーの下請的存在からのスタート。(2)事務所数、従業員数、売上高等に関しては、零細業者が多く。(3)システムエンジニア、プログラマー等の技術者の集団です。
さて、ではこのようなソフトウェア業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上です。ソフトウェア開発、プログラム作成の受託契約は、一応金額を定めますが、その金額が即、確定金額にならない場合が多く見られます。つまり、予想以上に困難な作業については、それが判明した時点で交渉し、作業の途中または完成後、別途追加料金を請求することが多いからです。
このため調査では、特に契約条項と実際の作業状況とを十分に比較検討し、利益率の悪い取引については、追加料金計上の有無を確認し、売上計上の漏れが無いかチェックします。
また、受託作業の管理については、各プロジェクト毎にチーフを定め、実施計画表、作業スケジュール表、週間作業予定・実績表、個別作業進捗状況表、作業進捗状況一覧表等により管理をしていますので、これらを精査することにより計上漏れがないか検討します。
次に外注費です。外注先は零細業者も多いため、記帳が不備なケースも多々あります。そこで架空計上や金額の改ざんがよく行われます。また、簡単なプログラム作成等については、人件費の安い中国、韓国、台湾の企業や現地法人に外注することが多いので、取引内容の確認が重要です。
また、この業界は人材産業ですから、人材の確保、特に上級情報処理技術者(SE)の確保が重要課題なので、激しい引き抜き合戦が生じ、多額(数千万単位もある)の引抜料が発生しています。受け取る側は雑所得ですが、それに対する所得税を実質的に企業側に求める(引抜料は手取額で決める)ため、この税額分を支払企業は別途の架空経費で処理するケースが目立ちます。また、優秀な社員の引き留め策で、海外旅行や豪華な慰安旅行を実施していることが多く、海外研修等の名目旅行でも十分チェックします。(従業員なら源泉所得税、役員なら認定賞与)

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石川税務会計事務所

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