税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(52)

今回は、「薬局業」です。
街には薬局(今風に言えばドラッグストア)が溢れています。薬のみならずサプリメントや健康器具、はたまた化粧品から食料品まで健康と美容に関するものなら何でもそろうといった感じです。以前は医院の近所で、処方箋の薬を調合する薬局が多かったのですが、今は薬の大衆化と健康食品への関心の高さから一般販売の薬局が多くなっています。
場所も、従来の周辺都市や住宅地の近くといったイメージから、今は大都市にもたくさん進出していますし、ビジネス街の中心地にも当たり前に進出しています。一度丸ビルの近くで、かなり大きなマツキヨを発見し、多くのサラリーマンで賑わっているのを見て驚いた記憶がありますが、それだけ薬等の大衆化が進んだのと、コンビニ的な要素も加わった利便性が受けているように思えます。
基本的に大量の商品を現金で販売しますので、レジを含め現金管理が一番重要なポイントとなります。また、種類が非常に多く仕入先も広範囲に及ぶことから、商品管理や棚卸の把握が非常に難しい業種です。人材的にも必ず薬剤師を配置しなくてはいけないので、その争奪戦も厳しいようです。また、他業種からの新規参入が続き競争が相当厳しくなっているので、新規の出店地を確保するのが段々難しくなってきているようです。
さて、ではこのような薬局業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、現金管理の妥当性です。すべての売上を現金決済が占めますので、間違いなく全取引をレジで打っているかを検証する必要があります。ですので、事前に内定調査を行い、一部の取引をレジに打っていないことがないか、店が終わった後もう一度打ち直していないか等をチェックします。具体的には、事前に何度か様子を周りから見てこの様なことがないか検証します。また、時々次のような内定調査を実施します。例えば、1万円札を用意しその札の番号を控えた上で、何点か商品を買い、これらの商品が控えのレジペーパーに打たれているか、その一万円札はレジ内に保管しているかを確かめるということです。売上除外の手口でよくあるものは次のようなものです。まずお客さんにはレジを打ってペーパーを渡します。しかし、控えとしてのレジペーパーは打っていない(俗に空打ちと言います。)状態で、同時に売上金を抜いてしまう方法です。これができないレジは、後から抜かない金額の分だけ打ち込むわけです。
従ってこれらの証拠がうやむやにならないように、内定調査の2~3日以内が調査日になります。逆に言えば調査の直前に内定調査を行うわけです。現金の管理者や現金の保管場所をチェックするため、何度か繰り返して行うこともあります。その札が金庫の無ければ、どこかに隠しているか使ってしまった事になります。
後、在庫の簿外や過小評価は良く行われる手口です。種類も多く、棚卸原票を誤魔化すだけで利益を圧縮できるからです。これには、調査日の棚卸から逆算する方法や翌期の販売量から嘘を見破る方法とかがあります。また、仕入先からのリベートを除外しているケースもよくあります。

一覧に戻る

ページトップへ

石川税務会計事務所

〒102-0084 東京都千代田区二番町5-2 麹町駅プラザ803
TEL: 03-5211-1541
FAX: 03-5211-0777
info@ishikawa-taxoffice.com