税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(51)

今回は、「貸金業」です。
アコム、武富士等の貸金業界には、その厳しい取り立てに端を発した世間の批判により逆風が吹いています。また、現在国会で審議されていますが、利息制限法(罰則規定なし)の年15%~20%以上で、出資法(罰則規定あり)の年29.2%未満の、いわゆるグレーゾーンは早急に撤廃される予定です。ただ、逆説的に言いますと、今までは29%という高利益体質の業種であったという事が言えます。また、比較的少額の貸し付けが中心で、銀行なんかでは融資が受けられない人を対象とするため、中小の業者はあまり影響がないのではとも言われています。
貸金業を開業するためには許可がいります。また。法人は500万円を、個人は300万円以上を用意する必要があります。ただ、原資が必要な業種ですから、1,000万円~2,000万円位は持っている人、もしくは低利で融資してくれる人を知っている人がやる職業です。
貸付に関しては、本人の収入状況にもよりますが、通常は保証人か物的担保を取ります。保証人は一流企業の社員、公務員等、定期収入が入る人で働き先も安定している業種が好まれます。担保物件によっては、むしろ返済できずに競売になることを望むようなケースもあるようです。
さて、ではこのような貸金業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、貸付先の把握です。店舗を構え、人を何人も抱えているような業者でも、現金で貸付けを行い、回収も現金で完了させ、簿外売上としているケースがあります。そして、金主(大きな資金が必要な時に融資してくれる人のことです。10%近く要求するケースもあるようです)への払いもこれまた簿外というケースです。このような場合には、把握は困難を極めます。ただ、融資が上手く行って手元に現金が貯まってくると、使いたくなるのが人情です。また簿外のお金を融資の元金にしたくなります。前者の場合は、遊興費や高級外車、住宅、貴金属、海外旅行といつものような「派手さ振り」で足が着きます。また後者は、「だれだれさんから借り入れたことにする」ケースですが、余程しっかりした相手先でないと「うそ」がばれることになります。案外、回収金の一部を間違えて本勘定(表の銀行預金)に入れてしまうことがあり、これから足が着いて全貌把握ということがあります。また、保証人や担保物件を処分して回収したお金も、やはり簿外にすることがあります。ただ、この様な場合も担保物件を巡り訴訟になったとか、保証人からのクレーム等で大きな騒ぎとなって脱税の面も表面に出て来ることがあります。
次に多いのは貸付けが回収できなくなったとして貸倒れにするやり方です。これはほぼ倒産することが分かっている者に対して、架空の貸付を計上し、本当に倒産させるやり方です。ですので、倒産の事実よりも本当に貸付が行われたのかの確認が重要になります。
経費は、架空人件費や交際費の水増しが多いようです。

一覧に戻る

ページトップへ

石川税務会計事務所

〒102-0084 東京都千代田区二番町5-2 麹町駅プラザ803
TEL: 03-5211-1541
FAX: 03-5211-0777
info@ishikawa-taxoffice.com