税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(48)

今回は、「クラブ請負業」です。
このような名称が妥当かどうかは別にして、銀座・六本木などのクラブでは経営者自身が直接経営する以外に、腕利きのチーママに業務を委託し、目標売上に見合う収入を確保すれば、その収入の40%程度を業務委託費として支払うクラブ請負制(通常は2年間の契約が多いようです)が多く見られます。
百貨店の中の専門店が、百貨店に地代として売上の一定パーセントを支払う制度に似ています。契約に際しては、保証金と称して一定の(数百万円から数千万円)前受金が店側から支払われます。当初の運転資金的なものですが、目標売上に達しなければ返還する事が義務付けられていますので、契約終了後に収入となります。
一般に、ホステスさん等従業員の給料や酒の仕入れ、光熱費等の費用は店側で負担し、顧客確保の営業費用(ダイレクトメールや付け届け、中元歳暮等)はチーママで負担という形が多いようです。
昔のように社用族が、何もしないで来てくれる時代ではなくなり、それなりの顧客リストを持ち、常に危機意識を持ちながら新規顧客を開拓できる営業の専門家のみが生き残れる業界のようです。少し前に人気女優がクラブ業界を描いたテレビドラマがありました。そこまで厳しいかどうか分かりませんが、相当シビアな競争社会であることは間違いないようです。
さて、ではこのようなクラブ請負業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上のチェックですが、あくまで契約をしている店側の売上の40%位(契約書には明記している)がこちらの売上ですので、全体売上の一定%で請求書、振込金額が決定しているかチェックします。不審な点があれば、店側にも反面します。次に保証金の売上計上が、契約終了時に適切に行われているかチェックします。目標売上に達しなかったとか、契約期間以前に解雇されたとか、不正行為かあったとかでトラブルが生じた時は特に要注意です。本当は円満に終了したにもかかわらず、トラブルがあったとして保証金を全額返金したということにすれば利益を軽減できるからです。ただ相手側は前渡金の損失処理はできません。いずれにしても、金銭の事実関係と法的関係を検証することになります。
また、売掛金の回収の責任はチーママにありますので、これが増えてくると債権回収の費用や債権放棄の認定の問題が生じます。
経費関係では、衣裳費や化粧費、髪などの美容室代、中元歳暮等の接待交際費等この業種独特の費用が生じます。毎日のことなので多額に上りますが、領収書や個別に反面することによって事実関係をチェックします。中には領収書の枚数ほどは利用していないこともあります。特に衣裳費は30万円以上の場合は2年の減価償却が求められていますので、償却費用以外は資産計上となり経費否認されます。ホステスさんを個別に使う場合は、源泉税の徴収が必要になり、この点がチェックされます。

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