税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(47)

今回は、「引越業」です。
従来は3月、4月が一年の中で最も忙しいハイシーズンで、次は年末、それ以外は比較的落ち着いているのがこの業界の常識だったのですが、都心部での大規模開発のマンションが続々と竣工し、周辺地域からこれらのマンションへの引越が5月以降も続いているようです。
また、六本木、汐留、品川、丸の内では新しいビル群が立ち上がり、大企業を中心とした景気回復の兆しもあるため、企業の引越も盛況のようです。
ただ、運送業や宅配業等の関連業界からの参入はもとより、全く異業種からの参入も結構あるようで競争は激化しています。引越価格も、食器や衣服の梱包から荷ほどき、設置まで丸抱えのものから、単純な運搬だけのものまでとそれこそ千差万別という状態です。運搬中の家具等に潜むダニなどの殺虫処理や毛皮等管理の難しい商品の預かり・保管など、他社との差別化を図るための手段は留まるところを知りません。通常の運搬だけですと15万円~20万円位が多く、ほとんど全て業者側でやってもらえるお任せコースですと30万円以上となっています。これを4トントラック2台かプラス2トントラック、人員は8人~10人位で賄うことになります。お任せのコースだと食器など細かい品物の梱包に1日、引越後の梱包解きに1日が余分に必要となります。
運ぶ人員は、ほとんどが学生や主婦のアルバイトです。ピアノなどの重量物で特殊なノウハウが必要なものは専門業者に外注します。
さて、ではこのような引越業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、契約に際しては、事前に見積もりを行い十分顧客と協議の上で金額、日程を決定します。従って、見積書と契約書を精査し、契約をしなかったケースでも本当は仕事をして売上を除外していないかチェックします。また、自宅の建て替え等で1年後には元の場所に戻るケースがありますが、戻る時の売上を除外していないかチェックします。次に多いのは、高い料金のコースから低いコースへの付け替えです。また食器の梱包なども契約書からは外して売上金額を圧縮する方法も良くとられます。
次は人件費です。ほとんどがアルバイトで、1日で作業は終了します。従って何人かを水増しするとか、単価を引き下げるとか、どちらも行うとか、の方法が往々にとられます。ただし売上を単純に除外しているケースは、その仕事自体が契約書上は無いことになりますから、その仕事を行った人件費部分も計上しません。車両も同じです。ただ、他の現場に付け替えて、その分原価水増しを行います。これらのチェックには、現場ごとの原価チェックが有効です。水増しした分、他の現場と比較して採算性が極端に悪くなるからです。
また、不自然に通勤経路が長い人とか、遠くから車両が来ているようなケースは要注意です。
車両は、自社所有が多いのですが、時期によりますとリースや他から傭車します。この際に金額や台数を水増ししたりするケースが良く見られます。

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石川税務会計事務所

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