税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(45)

今回は、「介護施設業」です。
日本人の平均的寿命は80歳を越え世界一の長寿を誇っていますが、逆に老人大国でもあります。また数年の内に総人口が減少し始めたり、労働人口が不足する等色々なマイナス面が目立っています。この様な社会状況の中で、高齢者の人々を介護する「介護施設」の開設が目立っています。医療機関がそのような施設を併設するケースもありますが、どちらかというと介護の専門業者が施設を建設し、提携する医療機関のケアをサブにおいているケースが多いように思います。
地域によって価格面にはかなりの差がありますが、基本的には以下のような条件が多いようです。まず、30~40平方メートルのマンションに入居でき、寝泊まり、食事、トイレ、風呂は完備しています。万が一病気になった場合には、ドクターが施設の中あるいは近くにいて対応してくれます。最悪の場合には入院もできます。軽度の痴呆等介護が必要な人には、ケアをしてくれる人がつきます。このような条件で、死ぬまで面倒を見てくれます。必要なコストは、入会金が2,000万円~4,000万円、月間費用が16万円~20万円です。都心の高級住宅地ですと入会金が1億円超、月間費用も50万円超かかるケースもあるようです。
現代は、核家族化による家族制度の崩壊、親が80歳を越えますと子供さえ60歳近くなって介護が困難、高齢者ほど資産を保有し手厚い年金制度に守られていてこういった制度に乗りやすい等の理由で、このような介護施設は非常に伸びています。
さて、ではこのような介護施設業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上です。入居に際して契約書を交わしますが、人気のある施設ですと規定の入会金とは別に裏金として取ることもあるようです。当然これらは計上しませんよね。また、契約をしても直ちに入居するとは限らないので、実際に入居をしてもしばらくは入居しなかったとして月間の売上を除外するケースもあります。この時は当然現金での取引です。
次に介護に携わる人の人件費です。朝早くから夜までたくさんの人が従事しますので、架空の人間を雇用したことにしたり、家族の名前を使ったり、アルバイトの人数をごまかしたり、色々な操作の手段を使うことがあります。また実在の人でさえ退職後も支払ったことにして経費計上し、簿外にするケースはよくあります。
また、食事代やシーツなどの洗濯、設備の点検や修理、ドクターへの支払い等経費の支払いも多岐に及びます。従ってこの中の特定の業者と結託して、単価を上乗せし、いったん支払った上で、後日架空の銀行口座に還流させるやり方は非常に良く行われる手法です。悪質なケースですと、孫請けの業者から還流させたり、何年か経った後に還流させたりと非常に巧妙になっています。
更に、上記の入会金は、入居者が死亡してもその資金は返還しないことが原則のようです。従ってこの資金を簿外で運用し、この利益を除外するケースもあります。

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