税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(43)

今回は、「プロパンガス業」です。
石油の高騰と今年の厳冬により灯油、ガスの値段が高くなっています。景気の方も大手企業はかなり改善されているとはいえ、まだまだ中小企業には波及していないのが現状ではないでしょうか。今回は燃料業の中のプロパンガスを取り上げます。都心部では都市ガスが行き渡り大手ガス会社が独占で供給していますが、少し地方に行きますと未だにプロパンガスを中小の会社で販売しています。そこではガスボンベを個々の家庭に設置し、空になると同じ差し替え用のボンベを持ち込んで交換します。そして月末になると月間の使用料を計って料金請求を行います。ガス器具とかガスコンロの販売もありますが、基本的にはこの重い危険なガスボンベを運んで設置し交換し管理するのがこの業種の基本です。
取り扱いによっては爆発する可能性のあるガスを販売するわけですから、危険物を扱う免許が必要です。またボンベは貸与しますので、これを事前に用意する資金が必要となります。また、重たいボンベを運ぶ車両や人間も必要です。従って、米屋さんとか酒屋さん等昔から重たいものの運搬、販売を行う商売からプロパン業を兼業で始める方も多くいます。
つまり初期投資にまとまった資金や人材が必要なので、全く新規ではなくその地域で重量物の販売の実績があり、人物的にも一定の評価を受けている人が事業展開しているということです。ここで注目すべき点は粗利益です。一般に粗利益は40%~45%あります。重量物、危険物という点を考慮してもかなりの率です。今は電気との競争も激しくなっていますので、少し下がっているかもしれません。
さて、ではこのようなプロパンガス業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上げのチェックです。新規契約には必ずボンベが貸与されますので、所有ボンベの内何本が貸与されているかを把握することで売上げ規模を把握できます。ただボンベを他から融通してもらったり、ガスも複数の業者から仕入れて一業者ごと除外したりすると 把握できません。また、新規契約の時期を数ヶ月ずらすとか、一定の地域ごと売上げを除外するケースもありますので地図等で契約先を落とし込んでチェックし、おかしいと思えるところは個別に反面調査をします。ガス器具とかガスコンロの販売は仕入れと対比してチェックします。
また、ガスの仕入れ料と販売量を月別にチェックし、大きなバランスの崩れがないか検討します。仕入れが多いときは売上げの除外が想定されますし、販売量が多いときは仕入れの除外(除外した仕入れに見合う売上げは当然除外しています。)しています。このように仕入れと売上げはセットで検討していきます。
次に人件費です。今は車でボンベを運びますが、危険物で重量物である以上必ず人が運搬します。アルバイトも補助でつけるでしょう。この際に人数をごまかして多く計上したり、賃金を過大に計上するケースがあります。また、退職した人を引き続き雇ったことにして給与計上したり、払ってもいない退職金を払ったことにすることもあります。

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