税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(41)

今回は、「スポーツクラブ業」です。
長かった不況から少し回復基調に入ったかのような日本経済ですが、本格的な回復にはほど遠く、特に高齢者層には、老年者控除の廃止等による課税の強化、健康保険料や介護保険料の負担増、年金の支給削減の検討等厳しい話が相次いでします。「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話ではありませんが、最近高齢者の方々のスポーツクラブ加入が激増しているようです。自分の健康は自分で守り、医療費が掛からず、介護も必要ない元気なお年寄りが増えることはとても良いことだと考えるとともに、世界でも類のない高齢化社会に突入した日本の将来を懸念せずにはいられません。
さて、それにしても今までのサラリーマンやOLのみならず、高齢者層が通うスポーツクラブとはどのような仕組みになっているのでしょうか。まず、マシンや器具を使った筋肉トレーニング、ランニングマシンやクライミングマシンあるいはヨガやジャズダンスを使った有酸素系(脂肪燃焼系)トレーニング、プールでのスイミングやアクアビクス等基本料金に含まれるものと、テニスやゴルフ、ボクシングや空手、英会話やキッズ専用コースなど別途料金がかかるものまで、楽しくスポーツできる環境のオンパレードです。また中には肥満に悩む人々のためダイエットコースとか妊婦のためのマタニティコース、スポーツ後にはマッサージや鍼まであります。料金的には入会金が5,000円~10,000円、会費は月5,000円~15,000円が平均的なところです。後、スペシャルメニューは3,000円~25,000円と幅が広く、タオル等の貸し出し、ドリンク剤の販売、健康診断料、水着やトレーニングウェアの販売等あらゆるものに及びます。
さて、ではこのようなスポーツクラブ業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上の把握です。会費、入会金等は会員名簿とチェックします。毎月の会費入金は通常銀行口座から自動引き落とししますのであまり脱漏は考えられませんが、当初の入会金や1ヶ月目は現金で集金するケースが多いのでこれを抜くケースがあります。「他社との競争のため値引きした」とか言ってです。また、特別コースの料金も、現金で決済する場合は申込書を一部破棄し、その金額を抜いてしまえば分かりません。タオルやドリンクは仕入れ数量と比較すれば分かりますが、現金仕入れを抜いてしまえば分かりません。従って対策的には、良く特別コースを利用する人が何ヶ月か利用していなければ実際に聞いてみるとか、申込書の印刷毎数と消費枚数の異常な差がないかとか、現金仕入れがないかとかチェックするのです。
また、従業員は複数のセンターを頻繁に転勤するため管理がずさんになりがちです。従って既に辞めているのに在職していることにして給与計上するとか、アルバイトも同様に水増しして計上するケースが良くあります。
更に、病気等で通えず休会を申し出たときに支払う会費を計上せず、そのまま退会させるケースもあります。スポーツクラブ間の競争が激しいため会員が相当数変動します。従って入会、休会、退会時の処理で不正を行うケースが目立ちます。

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石川税務会計事務所

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