税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(40)

今回は、「葬儀業」です。
死は誰にも必ず訪れます。今日の日本人の平均寿命が世界一とは言え、逆に今年から総人口が減り始め、老人の人口比率が世界一なのもやはり日本です。そして、自分の葬儀の費用については、子供達に負担とならないようにと、生前から無尽の形式により費用を積み立てるケースが多く見られます。つまり、葬儀が60万円掛かるとします。そこで毎月1万円づつ積み立て、5年間掛かって60万円になればそこで打ち止めとなります。不幸にしてそれまでに亡くなればそれ以上は負担する必要はありません。大体この形式でお金を集めている葬儀業は、自ら葬儀を執り行うので利益分を考えれば損をすることはありません。損どころか結構な利益を上げています。
つまり、お客様がお金を事前に預けてくれて、一端葬儀が発生すれば自分の設備でセレモニーを比較的安価に行え、それ以上何の心配もいりません。実際預かった資金が相当な金額になり、豪華な葬儀場を建設したにもかかわらず資金が余ってしょうがないという話を聞いたことがあります。
細かい原価計算をした訳ではありませんが、祭壇にしても組み直して何回も使うわけですし、棺桶といってもそれなりの金額で収まるはずです。お坊さんの費用は実費でしょうが一般には数名で行いますので大きな比率にはなりません。また、花輪やしきびなどもそれなりのランク付けで収まります。一説では30~40%近い利益率のようです。
さて、ではこのような葬儀業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上です。大きな業者になると預り金が何十億円になるケースもあります。この内葬儀を実施し、売上に上げなくてはいけないものが確実に計上されているかチェックします。中にはずいぶん昔に破産等の理由により一家でいなくなり、返還しなくて良いケースもあるからです。また、花輪などの単価や数量を減額し、また祭壇や棺桶の料金等を安い物に付け替えてしまえば売上を低く抑えることができます。葬儀が終われば物理的な証拠は消えてしまうからです。しかも資金は現金で事前に集金済みですからチェックできません。
また、葬儀場や祭壇等の設備は、過大な金額で計上するケースが見られます。かなりの資金を持っていますので、実際には5億円の設備を7億円として購入し、後で2億円を仮名預金等にバックさせる方式です。こうすれば減価償却費を過大に計上でき、利益を抑えることができます。同時に簿外の資金を所有できますので、これで遊興費に当てたり、別荘地や高級外車の購入に当てたりするケースが多く見られます。また更に株式とか金、外債などの投資に向かうケースもあります。
一般経費としては、同族でやっている企業がほとんどなので、働いてもいない家族従業員を雇用したことにして多額の給与を支払っていたり、家事関連費を費用に紛れ込ませる等の方法が多く取られます。

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