税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(39)

今回は、「リート業」です。
リート(REIT)とは、一般投資家から資金を集め、その資金を主としてビルやマンション等の収益用不動産に投資をし、そこから生み出される賃貸収入や売却益を投資主に分配することを目的とする投資信託型の金融商品です。英語のReal Estate Investment Trustの頭文字をとって「REIT(リート)」と呼ばれています。いわゆる不動産の証券化と言われるものです。「REIT」は、欧米で既に40年の歴史があり、日本でも2000年11月に「投資信託及び投資法人に関する法律」(改正投資法)が施行されたことから、不動産投資信託の組成が可能となりました。収益の大半(90%超)を投資主に分配すること等により実質的に法人税が非課税となり、結果として魅力的な配当利回りの期待できる新しい金融商品として注目を集めています。リート業者は、一定の管理手数料を取った後、投資家に分配金を支払います。リートは定期的に入る賃料収入を基本としており、比較的安定性があると言われています。
実際には、東京証券取引所に上場されている26銘柄を始め大小様々な投資信託があり、利回り(家賃収入、物件の売却益から必要経費、運用法人の手数料等を引いた純利益を投資金額で割ったもの)を競っています。発売された当初は8~9%近くのものも存在していましたが、現在は4%近くまで下がっています。また、投資単価は上場しているものは50万円(時価は100万円近く)からですが、相対で取引しているものは300万円~500万円が中心です。
さて、ではこのようなリート業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上の中心を占める家賃収入や一部物件の売却収入のチェックです。ビル等の賃貸しの場合、入居しているテナントの入居、退去により礼金や敷金が入ります。これらの非日常的な収入を改ざんし簿外にするケースはよくあります。また、仲介業者には通常1ヶ月の手数料を支払いますが、この一部をバックさせることもあります。更に、不動産自体を売却の上、その投資信託を解散させることがありますが、売却価格を低く改ざんし簿外利益を裏リベートとしてバックさせたり、賃貸時と同じく仲介手数料の一部をバックさせる手口もよくあります。
次ぎに屋上、壁面の塗装工事(ほぼ10年単位で必要な大規模修繕)時には、工事費を水増しさせ、同じく裏口座にバックさせるとか、ありもしない工事をでっち上げ経費参入するとか、途中で手直し工事が入り過大な工事費にするとか等が主な手口です。
いずれにしても現金、預金等のチェック、物件毎、修繕計画との乖離等のチェックを通じ事実の解明をして行きます。
ただ、現在は利回り計算の優利不利が資金を集められるかどうかのポイントですので、ある程度利回りの良い物、言い換えれば割安に仕入れできる物件でないと上記のような利益を抜くことが出来ない状況です。一方利回り低下をカバーするため、資金の一部を低利のノンリコースローン(返済額が時価に連動するローン)で補填するものも出ています。

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