税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(36)

今回は、「旅行代理店業」です。
バブル崩壊から15年が過ぎ、日本経済もかなり明るさが見え始めました。一時は不況業種の代表のように言われた旅行代理店業も、HISなど新規参入会社による競争原理の徹底により、価格の低下と多種多様な商品の開発が行われ活況を呈しています。事実このお盆中の国内、海外旅行に出かけた旅行者は、前年実績を上回ったようです。また、海外からの旅行者も相当増え、秋葉原、箱根や北海道は中国始め東南アジアからの訪問者で一杯だそうです。
最近の傾向としては、若い層を中心とした(利用に制限はあるものの)低価格の商品と、団塊世代に代表される高所得者の要求にも耐える高額の嗜好商品に分かれるようです。前者は、若い時代から海外旅行に出かけるような世代が好む商品で、自由な組み合わせとリーズナブルな価格が売り物のものです。一方後者は、時間的にも価格的にも余裕のある層が好む商品で、ホテル、飛行機、食事等いずれも超一流の組み合わせが売り物です。いずれもよく売れているようです。実際の価格の例としては、ニューヨーク行きの飛行機(往復)でも、エコノミーの3万円代からビジネスの60万円まで幅があり、正しく好みによっていくらでも自分に合う計画ができる状態です。十数年前に何十万円も払って定番のスポットのみ、しかも団体で回るしかなかった状況と比べ隔世の感があります。これを実現しているのは、インターネットを使って内容、価格を簡単に調べることが出来る情報社会の実現です。最近は、これらの情報を比較するサイト(旅ドットコム等)の充実が、更により良い商品の開発を促す良い循環に貢献していると感じます。
さて、ではこのような旅行代理店業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上については、ネット経由での申込みも含め申込書、契約書、領収書をチェックします。クレジット決済や振込の場合には全額計上するでしょうが、現金決済の場合には申込書等を全て破棄し、売上全額を除外するケースがあります。また、この業界に特徴的なのは、お土産屋、レストラン等からの紹介コミッションです。これらの店に客を紹介しかつ客が購入すれば、その購入額の一定パーセントがコミッションとして旅行代理店にキックバックされます。これは両者の力関係によるわけで、必ずしも支払われるものではありませんが、新規契約店や業界的に劣性な場合には多くのコミッションが支払われる傾向にあります。これらを個人的な口座や架空口座に振り込まさせ、全額除外することも良くある手口です。
一方、飛行機のチケット等仕入についても、数量的な規模や今までの歴史的なつながりによって仕入レートが違っていて、コミッションでキックバックするケースもあります。
また、外注費となる添乗員の人数を水増しし、経費を過大に計上することもよくあります。特に海外旅行で現地の添乗員を付ける場合には、単価や従事時間を引き上げ誤魔化すことが良く行われます。
その他の経費についても、現地の交通費、接待交通費、通信費等の費用については言葉の問題もあり、架空に領収書を集めるケースがあります。

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石川税務会計事務所

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