税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(34)

今回は、「旅館業」です。
今温泉を売り物にした旅館が人気です。旅行パンフはもとより、これらを特集した雑誌類も多く出版されています。特に露天風呂付きの部屋とか、露天の各種浴場が充実した所は非常に盛況のようです。また、最近は海外からのお客さんが多くなり、旅館内の表示や食事のメニューを中国語や韓国語で行うケースが増えています。先日も箱根の旅館に行ってきましたが、非常に予約が取りにくくなっていました。また、露天風呂付きの部屋から埋まって行くので、露天風呂を新たに設置するとか、2部屋を1部屋にした上で風呂を大きくするとかの改築工事を積極的に行っていました。更に、海外からのお客様が多くなったことから、英語のできる従業員を雇用し、管内の施設案内や料理メニューを日本語以外にも英語、中国語、韓国語で表示していました。海外の方には何が好評なのですかと仲居さんに質問したところ、もてなしのサービス(到着時の接待、浴衣などの小物類や食事の世話等)とお風呂だと言っていました。非常に気の付く心遣いが受けているようです。また、日本式の露天風呂は海外ではほとんど無いので興味があるようです。
価格帯的には高いところと大衆的な料金の二極化が進んでおり、また上記しましたように露天風呂とか海外の方々も広く受け入れるとかの特長がないと業績が伸びないようです。後、あくまでも従業員さんのサービスによって評価が大きく変わってしまうので、この訓練次第という点が大きいようです。
さて、ではこのような旅館業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上に関しては、宿帳の確認です。宿泊客はその名前、住所等を記載して旅館側に提出しますから、これらの名前の売上が上がっているかどうか確認します。ただ、現金で決済し、宿帳を破棄されれば(一枚毎のルーズリーフなので簡単に破棄できます)簡単には解明できません。従って、色々な面から売上金額の妥当性を検証するわけです。まず食事の観点から、食材の仕入量や箸の消費量、あるいはお酒の消費量から想定できる客数を割り出します。そして実際の客数と比較し、売上の除外がないかチェックします。また、宿泊もしますからシーツの洗濯数から使用枚数を確認し、人数を確認することもやります。このような検討の結果、大きな差異があればその理由を探していくわけです。例えば、臨場時にはゴミ箱を必ずチェックします。宿帳とか請求書とか銀行取引のメモとかが捨てられていることがよくあるからです。また、女将さんとか経理担当者の持ち物は、私物も含め臨場時にチェックします。更に、現金・預金の保管場所は全てチェックします。手提げ金庫や仏壇の中に保管している人もいますので、それも確認します。
後は、売上を除外していれば仕入も除外していますので、反面調査等で把握した仕入金額よりも決算額が少ない事もあります。この時も売上の除外を追うことになります。また、人件費はかなりの比率に上りますので、退職した人の給料を何年か支払ったことにして架空の人件費を計上したりすることがあります。どうしてもおかしいと判断する場合には個別に反面し事実を確認します。経費も家族経営ですと家事関連費が混入するケースが多いので厳しく見ます。

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