税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(32)

今回は、「マッサージ業」です。
マッサージという職業は昔から「按摩さん」として存在していますが、現代では独立系のマッサージ店が駅前やビジネス街、あるいは新宿などの繁華街にも広く進出し、手軽にサラリーマンやOLの「癒しの場」として機能しています。
また、通常の体全体をマッサージするボディケアと足裏だけをマッサージするフットケアに分かれますが、料金的にはいずれも10分1,000円というのが相場です。後基本料として1,000円を取ります。従って、最も使用頻度の高い60分マッサージをやってもらいますと、7,000円となります。多少ディスカウントが入っても5,000円くらいが相場です。また、通常のマッサージ以外にオイルマッサージやストーンマッサージ、更にアロマテラピーなどスペシャルメニューを組み合わせて収益性を高める努力を行っています。
最近は、同業他社が多くなり場所によっては多少価格破壊が発生していますが、先行して好立地を押さえた先発組は高収益性を保っています。しかも全額が現金決済のため貸倒が発生せず、滞納も無いため、キャッシュフロー会計上も非常に高収益の企業が多いのが特長です。また、比較的客層にはリピーターが多いため、一端名前が売れると簡単に他店舗展開ができ、フランチャイズ組織で事業を急速に伸ばすことが可能です。
さて、ではこのようなマッサージ業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、来客した数の確認です。通常は契約書、領収書等の原始記録をチェックしますが、そもそも領収書の伝票番号が連番で無ければ、領収書が必ず切られたかどうかさえ分かりません。従って、このような売上に掛かる証拠資料の信頼性が低ければ、徹底的に反面調査や銀行調査を行うわけです。また、数量計算も行います。これは大数観察(調査先の状況を把握の上、税金脱漏の手法を推定し、どの程度(金額)脱漏しているか)の手法を使いう事により代替のごまかし金額を推定するものです。この金額をある意味目標数値として、事実関係(仮名預金や簿外資産、あるいは簿外債務の返済)を積み上げていくわけです。ある意味では長年の経験と過去の事例に基づき、地道な証拠固めを行うわけです。
具体的には、通常のマッサージ数はタオルのリース数とか、オイルマッサージの数は一人当たりのオイル消費量を使います。
一方、それなりの金額を抜いていると仮定しますと、それなりの売上脱漏に見合う経費も決算上は除いているわけです。それは人件費しかありません。ほとんどがアルバイトでしょうから、働いていても辞めてしまったとかにするとか、不法滞在の外国人の経費を除外するとかして人件費を圧縮するわけです。
また、売上高を正直に出すとしますと、逆に人件費を水増しして所得(利益)を圧縮します。具体的には辞めてしまって人の給料を引き続き払ったことにしたり、全く架空で適当にアルバイトを雇ったことにするわけです。

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石川税務会計事務所

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