税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(31)

今回は、「海外サーバーからのソフト販売業」です。
最近のITを利用したサービスの向上は、楽天やライブドアのマスコミへの露出に限らず、ネット銀行やネット証券などの金融業やスイカやEdyなどの貨幣そのものの電子化にまで及んできました。そのようなIT化の流れの中、その極みのような職業とその税務について今回は取り上げたいと思います。
その内容は次のようなものです。今ある国のある会社に、相当量のデータを保存したサーバーがあるとします。そのデータや映像が日本ではある種グレイなものであるとします。
ただ、その国では全く問題のないものだとします。具体的には、ある種の映像とかデータの類です。人種間の倫理観や道徳観の解釈によって、許認可のレベルが大きく変わる分野での話です。誤解を恐れずしかももっと踏み込んで言いますと、今日のインターネットの普及は、ある種のポルノ的な映像を安価に見ることを目的に短期間に全世界的に広がったというのが今日の通説です。従って今日もそのようなニーズは広く存在します。
しかも、ある国では全く規制がなされず、ある国では厳しく取締が行われるとすると、規制が行われない国にサーバーを置いて、規制のある国からその種のデータをダウンロードさせるとすると(あくまで自前のサーバーで)、かなりのアクセスがあるのは自然のことかと思います。事実ある程度の売上が上がっています。
では、このような海外サーバーからのソフト販売業はどのように調査するのでしょうか。
まず、売上金の把握です。海外本社への振込や日本でのクレジット決済が中心ですが、これらの送金手段を採れない者の決済は、一端集金代行会社に集約することになります。直接日本の銀行から海外の銀行に送金しますと、多額の送金手数料(米国で4、5千円)と為替手数料(1ドルにつき2円)を取られるからです。この辺で売上金が確実に確保できるかが焦点となります。商品が映像でダウンロード記録が海外のサーバーに依存している以上、国内での資金の把握が最も重要になるからです。
また、実際の販促活動は国内で行われますので、その活動費は集金代行会社から行われます。従って、この活動費に生活費や遊興費が混入することがよく見られます。また、売上金を除外して簿外の資産(株式や土地、建物、あるいは高級外車や別荘、貴金属)に化けることも多い手口です。
海外に置いてあるサーバーのダウンロード記録の把握が最も有効な手段でしょうが、実際にはかなりハードルの高い仕事になるでしょう。現地の税務当局との連係捜査になるでしょう。また、実質的に日本国内の事業者の所得なのか、海外事業者の所得なのか判定が分かれることになるでしょう。その結果、今仮に海外にサーバーがあり、海外に受け皿会社を作っていたとしても、実質的に国内法人、個人が営業しているケースは、その実態により日本国内で課税することになります。つい最近では、武富士前会長から息子へのオランダの会社を利用した贈与(1600億円)が当局によって否認されました。結審までには時間がかかりますが、国際的な取引を十分に見定める必要があるほど実務界は既にグローバル化しているのだと感じる今日です。

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