税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(30)

今回は、「ベンチャーキャピタル業」です。
昨年度当たりから1円起業等による会社の設立が相次ぎ元気な企業が生まれています。また今回の商法改正では恒久的に1円の資本金で株式会社が設立できますので、今後一段と会社を簡単に作ることができるようになります。ベンチャーキャピタル業では一般の投資家から資金を集め、将来上場する可能性のある企業に投資し、上場時にキャピタルゲインを得て配当として配分することを主な業としていますが、今までは個人資金を匿名組合形式で集め、個人にそれぞれ配分していました。今後は1円で起業した会社(この会社のことを、この場合のように投資目的のために特別に用意された会社という意味で特定目的会社SPCとかSpecial Purpose Companyといいます)に資金を入れ投資を行うことになると思われます。法人で投資を行う方が、責任が出資金までに限定されるのと、税金が一定率で最高税率が個人より安いからです。従って環境としては良くなると思います。
一方、昨年の株式市場は世界的な金余りの影響や企業業績の回復により堅調でした。従って、新規公開企業の数及び株価も軒並み堅調に推移し、ベンチャーキャピタル業も好調だったようです。ただここ数年のITバブル後の赤字をどこまでカバーできたかによって個々の業績に差が生じているようです。いずれにしても上場まで行ければ、投資額の10倍から20倍の利益を得られますので、お金のある人にとってはやめられないものでしょう。
さて、ではこのようなベンチャーキャピタル業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、投資がどのような会社に行われ、何時上場したか、また失敗して倒産した時はその状況等を調べます。特に匿名組合方式がほとんどなので、預かった資金を確実に区分経理し、利益金を間違いなく配分しているか確認します。借名の名義を使い実は自身の利益を逃れることもありますので、決済金を追います。また、コンサル料や貸し金利息(投資以外に融資を必要とするケースも多い)、人材派遣料やコミッション等付随の収入が漏れていないかチェックします。
次ぎに問題なのは、失敗した時の損失のチェックです。貸付金(融資)については、金銭消費貸借証書に基づいて個人的なものではないか、架空ではないかを調べ、倒産なりの事実関係を確認します。税務上はかなりハードルが高く裁判所や債権者集会の配当決議が無ければ損金にはなりません。債権放棄の手続きが決算日までに行われており、内容に問題がなければ認められます。投資(株の取得)については、単に業績が悪く経営者の行方が知れないという程度では損失にはできません。BS、PLを専門のサービサーが精査の上適正時価を算出し、第三者に売買という形でやるのが一番安全です。期末時価の評価で評価損を計上することもできますが、同様に第三者の客観的な評価で行う等の安全策が必要でしょう。経費面では人件費、交通費などが多額になりますので、架空人件費、アルバイト等の水増し、交通費の過大計上等のチェックを行います。また、社外のコンサルタントを使ったことにして簿外資金とすることも良くありますのでこの辺をチェックします。

一覧に戻る

ページトップへ

石川税務会計事務所

〒102-0084 東京都千代田区二番町5-2 麹町駅プラザ803
TEL: 03-5211-1541
FAX: 03-5211-0777
info@ishikawa-taxoffice.com