税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(28)

今回は、「インターネット上の通販業」です。
楽天がプロ野球球団を仙台に作ることに決定し、ソフトバンクもダイエー球団の買収と、インターネット上の通販業の発展振りが注目されています。実際に楽天上で様々な商品を販売しているケースは数限りなく、若い世代ではインターネット上での購入が一番だという統計も出ています。クライアントの一人が中古本を楽天上で販売しているので、このケースを参考に見ていきたいと思います。
まず、5万円でウェブ上の店舗を開店します。その作業は簡単に行えるようです。次ぎに商品の写真をデジカメで撮り、購入意欲を増すコメントを付けます。これをサイトに上げることで、購入依頼者からのメールを待ちます。依頼が来れば、商品を宅急便(購入者持ち)で発送し終了となります。代金は購入以来の時に前金で送金されます。クレームがなければ直接必要な経費は、店舗代の5万円と、売上高の一定率の楽天へのコミッション、仕入代金、通信費程度で非常に効率的な販売方法です。
彼は、一般の中古書店で人が興味を引きそうな本を購入します。平均単価は100円~200円位のようです。30~50歳の男性をターゲットにしていますので、経済、社会関係を中心に彼らが青春時代を過ごした期間に発効された、当時結構流行った本を(出来れば今は絶版になったものが良いようです)数十冊単位で購入します。100~200円だと数十冊でも購入資金が比較的安く澄みます。これを1,000円位で販売します。今までの経験で90%近くが1~2ヶ月位で完売するようです。今の悩みは仕入が十分確保出来ないことと言っていました。彼は若い時そうゆう本を読みあさったので、同世代の人気度は分かるし、現在の販売状況からほぼ確実に売れ筋が分かるようです。
さて、ではこのようなインターネット上の通販業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上代金は振込で銀行口座に入金されます。この口座が架空口座で無ければ(現在は、個人の場合は住民票、法人の場合は商業登記簿を求められますので架空口座の新設は無理でしょう)確実に捕捉できます。また、特定の取引のみ別口座に振り込ませる方法もありますが、パソコン上のメール等で取引の全体を検証することによって売上除外を把握します。楽天などのプロダイバー側からも通信記録のデータを提出させる事があるでしょう。
次ぎに検討するのは、仕入金額のチェックです。スポット購入が主体ということはほとんどが現金取引ですので、悪意に満ちた者が架空の領収書や金額を不当に増やした領収書を用意していれば、これを個別にチェックしていくことになります。
また、商品に問題があり返金を求められるケースの処理ですが、やり取りの記録、送金の有無、責任の所在等をチェックします。後、利益が上がってくれば、家事関連費や遊興費の経費が増えてきますので、この辺りのチェックも入念にやっていきます。
どちらにしても、前金で注文を受けてからの発送になるので極めて安全で、粗利益率が80%を超えますので、売上さえ上がれば十分有望な業種です。
国税庁の発表した平成15年度のインターネット取引の所得税調査結果によりますと、当局が把握した申告漏れ所得金額1件当たりの平均額は955万円で、この金額は全実地調査の申告漏れ額に比べ3割も高いことが分かっています。今後は、当局のチェックの目も厳しいと予想されます。

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