税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(27)

今回は、「通信教育業」です。
一昨年前位から昨年にかけて非常に流行った職業として、厚生労働省の教育訓練給付の補助金を使った「通信教育」があります。具体的な教育内容は、mouseとか社会保険労務士とか様々ですが、共通する手段としては教育訓練給付の補助金を使うという点とパソコンを使った通信教育という点です。
前者の補助金制度は以下のようなものです。雇用保険に5年以上加入している者が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合、本人が教育訓練施設に支払った教育訓練経費の80%(現在は40%にダウン)の30万円(同じく20万円にダウン)補助金をから支給するというものでした。つまり37.5万円のコースを選んだ場合にはその80%の30万円は国から補助金を得、残り7.5万円を負担すればその教育を受けられるということです。もっと言いますと、教育は何でも良い、とにかくパソコンが欲しい人がいるとします。この人が雇用保険に5年以上加入していたとします。この時この人が37.5万円払い込み、手続きが支障なく進められた場合、国から30万円の補助金を得、自己負担は7.5万円でコンピュータを一応手に入れることができるわけです。一応と言ったのは、さすがに厚生労働省も販売までを認めたわけではなく、貸付やリースの条件でのみOKしていたようです。
当時ITバブルは既に消滅していましたが、パソコンの人気は高く(特にノートパソコン)未曾有の不景気も相まって、資格を、パソコンをというように人は挙ってこの教育訓練給付に邁進したわけです。その数、数万人と言われています。
さて、ではこのような通信教育業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、30万円は国からの補助ですから回収は確実であり、この金額と原価の差額が利益となります。ですから、パソコン業者からの仕入金額の把握がキーとなります。また、表面上は適正な(通常60~70%)仕入金額としても、バックリベート等裏金になりやすい資金の流れに注意することになります。また、パソコンの償却(当時は10万円以上は減価償却を必要とし、3年間の均等課税も20万円までです)も大きな問題になります。
つまり厚生労働省は貸付やリースしか認めないため、受講者へ売却するわけにはいきません。ゆえにパソコンは教育機関が持たざるを得ず、5年間で減価償却するしか選択肢は無いことになります。つまり例えば1,000人に37.5万円で売ったとします。売上は3.75億円になります。粗利が30%とすると粗利益は1.125億円になります。経費を0.3億円として純利益は0.825億円となります。
しかし70%(金額では26.25万円)の原価の内、18万円がパソコンの値段としますと経費として認められるのは6.642万円(18万円*.0.369・・5年償却率)です。従って(18万円-6.642万円)*1,000人=1.1358億円が加算されることになるわけです。実質2倍以上の利益と見なされるわけで恐ろしい結果になります。
今は30万円以下の資産は即時経費参入が認められており以上と同じ議論は出来ませんが、以前の期間は特に注意する必要があります。

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