税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(26)

今回は、「喫茶店業」です。
現在ではスターバックスやドトールなどの安くて、大規模な店舗が増えてきていますが、一方で10~20人も入ればいっぱいになる小規模で昔ながらの喫茶店も多く存在します。
私なんかは昼食後にゆっくりと、美味しいコーヒーや紅茶を一杯飲むのが楽しみです。特に今時の季候の良い時期には、オープンカフェスタイルで秋の澄んだ空気を楽しみながら一杯のコーヒーをいただくのは、何とも言えず幸せな気分になります。
また、立地の問題はありますが、比較的小資本で自分の趣味的要素を発展させて簡単に開業できるのもこの商売の特徴です。従って色々なアイデアでたくさんの種類の喫茶店が開店し、また厳しい競争に淘汰されて廃業していきます。ランチを併設している喫茶店もあれば、コーヒーのみのお店もあります。私の田舎の高松には、うどんをメニューに入れている喫茶店まであります。大阪などには昔「金のコーヒーカップ」でコーヒーを出す店までありました。このように色々な手で客を呼ぶわけですが、客が来てさえすればそれなりに儲かります。
その理由は、粗利益率が相当良いからです。標準的なお店では約90%あります。この数字に驚かれる読者の方も多いと思いますが、事実です。ちなみにこの数字に近い粗利益率を叩き出す業種は、銀座などのクラブ業界、化粧品業界など非常に僅かです。この収益力を生かすためにも、是非お客様に来ていただかなくてはいけないのです。
さて、ではこのような喫茶店業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、基本的に現金商売ですので、レジ、伝票の管理状況を把握し、現金出納帳、釣り銭に間違いや操作している点がないかチェックします。次ぎに、コーヒー豆の仕入量、仕入金額を把握します。そして1杯のコーヒーを作るのに必要なコーヒー豆を計算します。後は簡単な比率計算です。仕入れたコーヒー豆の数量から売上に計上できるコーヒーの杯数が計算できます。次ぎに単価を掛けてコーヒーだけの売上高が把握されます。更に、伝票なりレジペーパーから全体の売上高に対するコーヒーの売上高を数ヶ月間分把握できれば、同じような比率計算で店全体の売上高を推計できます。多少のロス分はありますが、その分考慮すれば澄みます。もっともプロの場合ロス分は1%以下でしょう。
次ぎにこのようにして計算した推定売上高と実際の計上売上高を比較します。通常は2倍以上違います。つまりこのような場合、実際の売上額と申告額には倍半分の差があるわけです。この差はズバリ言えば誤魔化した(あるいは脱税した)額となるわけです。簿外の預金、不動産または貴金属の購入、個人的消費等で費消されます。この証拠を把握した時逃げられなくなるわけです。今2倍以上と指摘した意味は次の通りです。つまり個人的に消費できる利益を2,000万円と仮定しましょう。申告所得も2,000万円とした場合全く問題がありません。しかし、実際の利益が4,000万円になったとしましょう。差額2,000万円は月150万円に上ります。この時、人は飲み食いだけでは消費できず、ついには簿外の資産形成へと向かうのです。 

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