税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(25)

今回は、「不動産転貸業」です。
最近気づいた商売なのですが、六本木、銀座といった繁華街でクラブ、バー、レストラン等に対して、店舗改装後の状態で転貸している商売があります。従来はビル所有者が直接賃貸するケースが中心でしたが、この場合には店の経営者が内装等追加工事を何千万円も掛けて行わねばならず負担でした。新商法では内装、空調工事も済みの状態で保証金、礼金も若干の割り増しで開業できような形態にしています。ただ、毎月の賃料はその分(30%位)高くなっています。内装工事はこの業界に詳しい専門家に実施させ、それほど業界に精通していなくても開業できるようにしています。つまり、資金はそれほど用意しなくてもお手軽に開業できるようにしているということです。
また、ある程度ビジネスで成功した時間とお金がある人は名誉が欲しくなるもので、六本木や銀座で店を持っているというのが一種のステイタスになるようです。そういった需要もあり、特に六本木は空きが出ると直ぐに埋まる状態のようです。
この商売のみそは、時間が経過すれば確実に収益が発生する点です。いわば金融業に近いと思います。しかも粗利益率は30%位あります。逆にリスク及び負担の面は、倒産による回収不能のリスクと当初の内装工事(最低1千万円)の資金負担の問題です。したがって、常に貸出先の情報を仕入れて経営状況をチェックする必要があり、資金付けのためには自ら資金を用意するか、スポンサーを捜す必要があります。また、物件を貸してくれる家主さんとの人間関係を構築、維持する必要があります。
さて、ではこのような不動産転貸業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、貸主、借主との契約書がありますから、保証料、礼金、毎月の賃料は明確になります。これを対比し、あまりに利益幅が薄い場合には契約外として受け取っていることがありますので、個別に反面します。また、契約を解除する場合に、保証金を没収したり、滞納賃料に充当したりしますから適正に処理しているかをチェックします。
次ぎに、当初に内装工事を行いますのでこの原価の妥当性を厳しくチェックします。この業界は「3年持てば良い」というのが常識のようで、最終的には廃業に追い込まれる事が多いようです。したがって、内装工事の耐用年数まで持たなくなり最後は除却損を立てなければならなくなることが多いからです。工事内容、面積、特別仕様の有無等を吟味しながら必要により下請先、取引銀行に反面して、架空工事、水増し工事が無いかチェックします。ある一定の数社の業者に集中発注し、決済は盆と暮れ、しかも現金となればその工事の全体を丹念に洗うことになります。
後は、経費ですが比較的単純な商取引なので人件費、交際費等を中心に家事関連費的なものが混入していれば否認しまう。
転貸の場合は、登記簿でその事実を確認できないため、小さな転貸物件を除外するか別名義にする事が考えられますので、この点の発見に重点が置かれるでしょう。

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