税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(24)

今回は、「建売業」です。
8月2日に国税庁から2004年分の路線価(1月1日現在)が公表されました。全国的に12年連続で下落という結果でしたが、大都市圏では、表参道の9.8%上昇を始め、銀座、六本木、品川など都心部は上昇が続いています。このような環境の下、戸建て住宅では特に世田谷区、目黒区、品川区、大田区、港区等の城南地区での人気が高く、土地25坪程度に3階建て木造(30坪程度)を付けて7,000万円~8,000万円位の物件がよく売れています。金利も少し上昇したとはいえ、変動で2.0%固定でも3.5%と安いのも原因のひとつでしょう。ただ、今は土地の取得が難しく、業者は仕入確保に苦労しているようです。この業界の特徴としては、仕入(土地)の情報の確保と建築施工の確実さ、また土地と建物の建築資金の確保にあります。土地の取得から建物の完成までいくら急いでも4ヶ月掛かります。従って、中小規模の業者はいかにその期間をいかに短縮し効率的な経営を行うかと、資金調達力(調達金利と規模)に利益の大小が直接関わってくるわけです。
また、大きく分けて、最初に土地を取得して建物を建築し、その後顧客を募集する従来型の建売業の業者と、土地を取得した段階で顧客を募り、注文応じて建物を建築する売建(うりたて)業者に分かれるようです。大手建築業者の中でも今は後者の形態が増えているようです。
さて、ではこのような建売業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、取得した土地と販売物件のチェックです。これにより販売漏れ、期末在庫の当否を検討します。また物件毎に利益率をチェックし、当該工事以外の費用が混入していないか検討します。以前あった例では、経営者の自宅の改装費用を販売物件の建築費用に紛れ込ませ原価を水増ししていることがありました。屋根工事とか水回りとかは、一定の業者に集中して発注することがよくあり、(集中発注によって安くさせる)この時に自宅改装分を紛れ込ませていたものです。
また、次ぎに多いのは建築の外注費を水増しして、最後には自分のB預金口座に還流させる手です。ある事案で、やり直しを頻繁にさせている工事が幾つかありました。利益率も他に比べて異常に低く、特定の業者への支払いも多額でした。早速その業者に反面して、帳簿、BK入金を精査しました。確かにその金額が入金されていましたが、やり直し後の工事は更に第三者の外注先に丸投げでした。そこでその第三者にも反面し確認しました。この業者も更に丸投げしていて、彼らは普段から一緒に仕事をしているグループで契約と資金だけをぐるぐる回していることを突き止めました。4件目の外注先に反面した時に、メイン銀行で入金はしているものの、ほぼ同額が現金で出金していました。伝票調査の結果一部が発注者の妻へ送金されていました。厳しく追及したところ残金も発注者にバックしていました。当然重加算しました。

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