税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(18)

今回は、「ネット販売業」です。
最近のブロードバンドの浸透に伴い、ネット上でサプリメントや本等いろいろの商品を販売するネット販売業が盛況です。Yahooや楽天によるオークションがもてはやされていますが、彼らの業績が史上最高となる中で、このようなネットを利用した販売の業種にも追い風となっています。
まず、実際の仕事の流れですが、ネット上で販売するためには商品をデジカメ等で撮影し、コメントを書いて値段を付け、ネット上にアップさせます。これを見た消費者はその金額を振込、注文します。入金を確認した業者は商品を発送して終了となります。広告費はほとんど必要としないため、通常の販売に比べて収益性が高く、また入金後に商品を発送するため極端に言えば仕入のための資金は入りません。後は、いかに売れる商品を途切れずに仕入れるかと、HPを見てもらえるよう工夫することです。
したがって、小資金で開業できることと、思い立ったら直ぐにでも始められるため、開業する人が急激に増えています。もっとも誰にでも簡単に始められるため、同業者の参入も激しく常に新鮮な商品、売り方が求められます。
では、このようなネット販売業はどのようにして調査するのでしょうか。
まず、売上ですが、ほとんどの売上は振込で決済されるため銀行の取引口座を確認すればほぼ解明できます。ただ、一度得意先になってしまえば何度もリピートするような商品(うどん、肉などの食料品、サプリメント等)の場合は、2回目以降の取引を別口座に振り込ませこれらを除外することがあります。このようなケースは同時に仕入高も除外します。売上だけを除外しますと、売上総利益率が極端に下がりすぐに分かってしますからです。
また、振込ではなく代引き(商品と引き替えに配達時に現金で回収する方法)のケースにこの売上の一部を除外することもよくある手口です。このような資金は別途プールされ、遊興費等に消費されるか、そのまま仮名預金、株式、土地等の資産に化けていきます。
次ぎに、経費としては通信費、HP作成費、運賃くらいなもので、極端な言い方をすれば経費はほとんど必要ない業種なので、特に多額の費用計上があればその内容が問題になります。良くあるのは家族労働者に給与を支払い、利益を圧縮する方法です。この場合には、実際に業務を行っているのか、仕事の内容と給与額が見合っているのかが問題となります。極端なケースでは一度も会社に来たことも、何をやっているかさえ知らないで、単に役員ということで多額の給与を支払っていることがあります。この場合には、全額が否認されます。役員なのでそれ相応の責任を負っており、これに対して給与を支払っても当然だという反論もありますが、その場合には取締役会を開催してこれに必ず出席し、その上でもせいぜい10~20万円位が相場のようです。
いずれにしましても、このように手軽に起業できることは好ましいことで、利益のあるところに調査が実施されるのは何時の時代も同じなのです。

一覧に戻る

ページトップへ

石川税務会計事務所

〒102-0084 東京都千代田区二番町5-2 麹町駅プラザ803
TEL: 03-5211-1541
FAX: 03-5211-0777
info@ishikawa-taxoffice.com