税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(17)

今回は、「クリーニング業」です。
クリーニング屋さんといえば昔からどこの商店街にも必ず1軒はある存在です。昔は器用な人であればアイロン台一つで仕事ができる(アメリカのクリーニング業は日本人から始まったと言われています)と言われたものですが、現在は、主流のドライクリーニングのための工場建設等、装置産業の側面も持ってきています。ではこのようなクリーニング業はどのように調査をするのでしょうか。
結論から言いますと飲食業や鮮魚店と同じく現金商売に属します。現実的にはお客さんから洗濯物を預かり、洗濯をして返すわけですから、一人一人の洗濯物をチェックして抜けている物を調べれば不正が無いかどうかはは検証できます。しかし、売上単価が安く(例えばYシャツは100~200円位)大量の洗濯物を取り扱う関係から、こんなことをしていたのではいくら時間があっても足りません。そこで初回の臨場時にお金の保存場所(レジ及び金庫)をまず第一にチェックします。ここで何も掴めなければその後の調査は進展が難しくなります。ですから、初回臨場(このことを現況調査といいます)には少なくとも2人以上で望みます。店主と話している時に、他の従業員が金とか、簿外の預金通帳や有価証券、二重帳簿を隠してしまう恐れもあるからです。したがって、このような業種は、事前通知無しに行うのが通常です。一般には、税理士さんとか会社宛に「何時調査に行くか」を連絡し、了解をもらってから調査に着手しますが、このような状況の業種は事前通知は行いません。
では、実際に私が経験した事例を紹介しましょう。10年以上前のことです。その店はある都市の中心部にあり、人通りの多い通りに面した立地で盛況でした。近くに住宅街もあり土曜、日曜日に持ち込まれることも多いようでした。店の中にドライクリーニングの設備も新設させ、従業員もてきぱき働いていました。また、お金は女将さんがしっかり管理し、レジや会計帳簿も彼女がつけていました。これらは事前に何回か外から観察し、また実際にYシャツやセーターを持ち込んでみて誰がどのような役割を果たし、特にお金の管理を誰がしているかをチェックしました。一方、申告の状況はこのような盛況振りとは異なり、売上、利益とも横ばいでした。
そこである月曜日の朝着手しました。土曜、日曜日に売り上げたお金を除外する前につかむためです。9時きっかりに入りました。レジ及び女将さんの机から多額の現金(現金出納帳の前日残よりもかなり多額の金額でした)が見つかり、個人名義の預金、株券、ゴルフ会員権等多くの簿外資産が把握できました。総額は1億円を軽く超えていました。その後、社長に聞いたところこのように話していました。「実際に設備資金を用意するのは大変だったけれども、立地が良いことと丁寧な仕事をした結果、おもしろいように売上が伸びた。値段もむしろ高くしたがその方がお客さんが多く来てくれた。」と。修正後の粗利益率は40%を超えていたと記憶しています。恐るべし「クリーニング業」。

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