税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(16)

今回は、「新聞販売業」です。
現在ではメールでの情報配信、ウェブサイト上でのニュース掲載等、様々の情報媒体がありますが、依然として新聞の持つメディアの優位性は根強いものがあります。今回はこの新聞屋さんに焦点を当てます。まず、新聞屋さんは新聞を配達するのが商売ですから、近隣の配達可能エリアにより3,000部とか10,000部とかを、毎日朝刊、夕刊で配達することになります。朝・夕刊月極で4,000円位ですから、この新聞販売による売上金額はかなりの金額に達します。ただ、利益面から言いますとほんの僅かの利益しか生み出しません。では、何で儲けているのでしょうか?その秘密は、金曜日、土曜日になるとドーンと増え、本紙よりも厚くなる折込広告です。これらは、不動産を始め、電機、薬品、スーパー等あらゆる業種のものが含まれ、サイズもB5~A3位まで様々のものがあります。これらは広告代理店から持ち込まれるものが多いのですが、中には直接店舗から持ち込まれるものもあります。これが一部1円とか、3円とかサイズによって値段が決まっていて、この金額が広告費として支払われます。例えば、3,000部の配達部数を持つ販売店が、1部平均2円の広告を30社から依頼されたとします。この利益額は、2円×30社×3,000部=180,000円にも上ります。金曜日、土曜日にこのペースで依頼があり、後の日にはこの10分の1としても、18万円×8+1.8万円×22=183.6万円と200万円近くの利益を稼ぐことになります。
しかも、このお金の決済は現金か振込のケースがほとんどです。なぜなら何日か続けて折込を入れるケースもほとんどは金、土曜日の2日が多く、多くは1回のみの依頼が多いからです。従って、このような1回限りの取引(これを単発取引と言います)で決済が現金というケースは、最も脱漏しやすい取引ですので丹念に追っていくことになります。
また、たまに同業者に折込を回し、その仲介料として現金を受け取ることがあります。例えば、依頼主が世田谷区全体の4大紙に折込を撒きたいが何件かの新聞屋さんしか知らない場合に、全体の取りまとめを特定の新聞屋さんに依頼するケースです。この場合も同様に売上から除外するケースが見受けられます。1つ1つの取引金額は少額ですが、非常に大量にありますので、全体で見れば相当な金額になる場合もあります。
次ぎに多いのは、配達員に人件費(アルバイト代)の過大計上です。朝刊と夕刊では配達員が異なるケースも多く、人の出入りが激しい業種です。従って、途中でいなくなった場合にもずっと勤務していたことにして、月末に過大に支払ったことにするケースです。このお金を遊興費や生活費に使ったりするケースがほとんどですが、多額の金額を裏預金としてプールし家とか車とか貴金属品とする悪質なケースもたまに見られます。
いずれにしても地域、人口密度や、朝日とか読売とかの販売紙の種類によってもその販売部数が大きく変化し、この部数に基づく折込の数によって収益が成り立っているわけです。

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石川税務会計事務所

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