税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(14)

今回は、「美容整形外科」です。
今年の確定申告における高額納税者として、いわゆる「プチ整形」等を取り扱う美容整形外科医が上位に名を連ねたのはご承知の通りです。そしてこの業種の特徴としては、売上のほとんどが自由診療だということです。従って、各自の技量によって料金体系は自由に決めて良いわけで、人によっては数百万円に上るケースもあるようです。また、顧客獲得のためには、定期的なコマーシャル(TV広告、雑誌、新聞への掲載、折り込み広告等)が欠かせず、医療業というよりも医者が行っている美容業と言って良いと思います。
ではこのような「美容整形外科」はどのように調査をするのでしょうか。まず売上の把握が優先しますので、カルテ、診察の申込票等、診察の記録が確実な書類をチェックします。そして一部クレジット決済もあるでしょうが、ほとんどは現金決済になりますので、現況時に簿外現金、簿外預金のチェックを行うことが決め手になります。ですから、誰が現預金を管理し、誰が店から銀行、自宅等に運ぶのかが重要になります。調査着手前にこのような情報を得るために、客を装って内部の状況を調査することを内偵調査といいますが、他店舗展開を行い急激に売上を伸ばしている対象者には往々にして内偵調査を実施します。
次ぎに多いのは薬の水増し、棚卸高の過少計上です。売上が自由診療ということはその治療にどの程度の薬あるいは材料を投下したのかが分かり難いため、購入金額を水増ししその差額を個人の裏口座に振り込みさせたり、個人的な遊興費に充てさせたりすることがあります。
また、コマーシャル等の広告費は、売上を維持拡大させるには必要不可欠な経費ですが、広告会社にとってもこの景気の悪い時期に安定的にかつ高額の広告費を払ってくれる「美容整形外科」は上得意になります。従って、一定の広告費を払ってくれる場合にはリベートを支払うことが良くあります。これが全て雑収入に計上されていればいいのですが、一部が裏預金に流れたり、個人的な支払いに充てられたりすることも良くあります。
このように不正な金の流れを追及するためには、現況時の預金を中心とする厳しい調査が欠かせないのです。勿論この段階でしくじらないための事前の準備も必要なわけです。
後、一端人気が上がり名前が売れてくると、フランチャイズ化し一定のフランチャイズフィーを徴収するとともに、材料だけは共同購入するケースがあります。このような場合に、フランチャイズフィーを全額除外し、材料は共同購入額で落とすという大胆なケースもありました。案外店一件分除外というケースは、盲点になることがあるようです。
更に、奥さんとか親族をスタッフとして雇用し、高額の給与を支払っていることがあります。業務と就業状況、業務の習熟度等を勘案して当否を決定するわけですが、全く診療所に来たことが無く、業務も分からないのに何百万も払っているケースが良くあります。法人化し、取締役で経営責任もあるケースでもせいぜい10~20万円/月であることを考えますと否認はしかたがないでしょう。

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