税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(12)

今回は、「鮮魚業」です。
いわゆる「魚屋」さんです。今はスーパーマーケットに押されて数は少なくなっていますが、各商店街等の身近には必ずあるお店です。また比較的古くから営業している店では、料亭等の得意先を多く抱えているケースや、寿司屋等を同時に経営しているケースもあり、このような場合は比較的堅調な業績を残しています。では、このような「魚屋」さんはどのように調査するのでしょうか。
まず、この業種の特徴は決済がほとんど現金だということです。売上もそうですが、仕入も市場から現金で仕入れますから、非常に把握のしにくい業種に当たります。また、前回、前々回の理容業、美容業のように「数量計算」がやりずらいため、全体の経営規模を適格に把握するのに時間が掛かります。
そのため、仕入に重点が掛かります。勿論売上の現金管理をチェックし、その後の銀行調査において簿外預金を把握すべく資金面の調査は厳しく行いますが、それよりも、販売している店舗において、売っている品物がどこから入ってきて、その決済はどうしているかをチェックする方が早いのです。また、今日仕入れた品物が店舗に並んでいるかチェックします。店舗に並べずにそのまま料亭等に販売してしまうことがあるからです。
このため、調査は店の始まる時間に(品物を並べて直後に)開始します。
具体的に言いますと、次のようです。今、店頭に色々な魚が並んでいます。その中で珍しい魚があったとしましょう。その仕入先はどこかチェックします。そしてもし仕入のリストに載っていなければ、簿外の仕入先があることになります。このようなケースはほぼ粗利益率を一定にするため、営業時間最後の2時間はレジを打たないか、打ってもお客さんに渡すペーパーのみの印字にとどめています。このやり方は他のレジを使う業種には共通的に見られる手口です。従って、時間を変えて、もしくは事前の内偵調査でこのような状況が無いかチェックします。
また、逆に仕入には上がっていても、陳列している品物に見あたらないケースがあります。このようなケースは、料亭等の大得意先や個人的に頼まれた人物に販売していることが多いものです。レジなどを置いていない店も多いので、売れてしまったと言えば追求しようがないのです。
また、彼らの考え方の中に独特のものがあります。それは、今日仕入れた金額が10万円としますと、この金額を回収するまでは目標とする利益率で売値を付け、それを回収した後は時間と共にディスカウントするという考え方です。つまり午後3時までに仕入代金10万円を回収したとしますと、その後は3割引、5割引、8割引にして最後は3匹まとめて300円とかにして売り切ってしまうというものです。一般的に見ますと極めて非合理的に見えますが、彼らはキャシュフロー会計を経験則的にやっているのです。だって、ディスカウントするまでに明日の資金は既に回収しているのですから。

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