税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(10)

今回は、「美容業」です。
世の女性方の美に対する願望は凄まじく、今はリタイアメントされた日本マクドナルド社の創業者藤田 田氏の著書「ユダヤの商法」でも、女性の欲望を満たす商売が一番であることをまず取り上げています。
その女性をターゲットにする商売としては、最も古くから行われていたのがこの「美容業」です。また、最近はカリスマ美容師とかでTVでも派手に紹介され、年収が何千万円にもなる人も出ているようです。では、このような「美容業」はどのように調査するのでしょうか。
まず、カットとかパーマネントの技能でお金をもらうわけですが、この決済はほとんど現金です。たまにカードもあるでしょうが、大半は現金決済です。このような現金商売の場合は、簿外の現金・預金を把握するのが最も有効な方法です。そこで、調査日現在のレジ合計と現金残高との照合、昨日の現金の保管状況をチェックします。具体的には、店の金庫、経理等の机の中、銀行の貸金庫、経理担当、経営者の鞄等をチェックし、簿外の現金・預金、証券、貸金庫の鍵、簿外銀行と思われる印鑑等の発見に努めます。通常「現況」とか「ガサ」とか言われるものです。あくまでも任意調査ですので強引なことはできませんが、協力をお願いするというスタンスでいろいろ見ていきます。「昨日までのお金はどこに保管されていますか」「誰が担当していますか」「社長はどのような書類で引き継ぎしますか」等矢継ぎ早に質問し、担当者を捕まえ、必要な書類、証拠となりそうな物証を把握します。ある程度ベテランになりますと、担当者、社長等の素振りでおかしなところが分かるようになります。
次ぎに、主材料のパーマのコールド液(パーマの時に髪を固める液体)の仕入数量を把握します。一人当たりのパーマに必要なコールド液の量は決まっていますから、この仕入数量から年間のパーマを掛けた人の人数が出ます。後は単価を掛ければパーマの年間予想売上額が出ます。パーマとそれ以外の売上高の比率は何ヶ月間かサンプリングすれば分かりますので、今仮にパーマとそれ以外の売上高の比率が50対50であれば、合計の予想売上高は「パーマの年間予想売上額×2」と計算されます。この金額と申告額を比べれば、どの程度売上高を圧縮しているか予想することができます。
この差額はあくまでも予想数値ですが、ある程度の訓練を積んだ調査官にはかなり正確に見通せます。むしろこの目標に向かって、処分の状況(どのようにお金を使ったかということ)を追跡していきます。つまり、土地・建物に◯◯◯万円、仮名預金に◯◯◯万円、子供の入学金に◯◯万円、外車に◯◯万円、ヴィトンの鞄に◯◯万円といった使い方をしているというところまで追います。
逆に、留保資産があまりに多いケースは、何店舗分を除外しているケースとか、仕入も売上に見合って抜いているケースがあります。

一覧に戻る

ページトップへ

石川税務会計事務所

〒102-0084 東京都千代田区二番町5-2 麹町駅プラザ803
TEL: 03-5211-1541
FAX: 03-5211-0777
info@ishikawa-taxoffice.com