税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(6)

今回は、「宝石、時計業」です。
現在、金の値段が急騰しています。また、ブルガリなどの高級時計もブームになっています。このような宝石、時計業の場合は、どのように調査をするのでしょうか。
まず、このような業種の商品は、その品目毎に全て値段が違います。例えば、ダイヤモンドを例に取っても、色、カラット(大きさ)、透明度等によって全て品質が異なり同じ物はありません。時計などもアンティークな物は同様に全て異なります。従って、事業主はそれぞれに個別に値段を付けているのです。それを値札に記載しています。
では、その原価(仕入値段)はどのように把握しているのでしょうか。もちろん、仕入帳には記載していますが、個々に記録することは不可能です。実は、その値札の裏にこっそり暗号で記録しているのです。例えば「0210665」であったとしましょう。最初の「02」は2002年の仕入の意味であり、最後の「65」は原価率「65%」を現しているとします。このことを知っていれば、その最後の数字を見て仕入値段を把握できるのです。
物品税があった時代は、これらの業種は国税局の物品税調査(今の査察調査並みの調査で一品たりとも脱漏を許さなかった)で相当のプレッシャ-を受けていました。現在では、消費税に統合されましたのでこのような調査はありませんが、その時代からの企業はそのプレッシャーを覚えていて比較的間違いが少ないようです。
さて、仕入値段(原価率)が分かればそれが反映された決算になっているかチェックします。つまり、平均原価率が65%なのに決算上は20%としますと相当の値引きが行われていないとつじつまが合わないわけです。また決算上の粗利益率が妥当な線だとしても、仕入と売上を同時に抜き決算調整しているケースも多いので、簿外の仕入れ先商品が店頭や保管場所に並んでないか、他店に預けた在庫がないか等をチェックします。後、期末棚卸をごまかすケースも多いため仕入簿と店頭、保管庫の現品チェックも重要な調査事項です。
比較的派手な業種ですから、飲食、服飾等の接待交際費や旅行費用等に家族だけの家事関連費が混入するケースも多く、商品である貴金属を自ら使用している(自家消費として売上に計上しなくてはなりません。)ケースもあります。
また、現金での買い付けも盛んに行われていますので、現金を使った仕入、売上除外のケースはなかなか解明が難しいケースがあります。このため、国税局のレベルでルートの解明を集中的に行うこともあります。
商品を扱う市場の地域が特定されるため、例えば真珠は神戸の市場でしか購入できませんので、そのルートを開かないと仕入ができません。従って、逆に一度信用を得ますと比較的順調に業績を伸ばし、大きな商権を獲得する業者さんが多いようです。

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