税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話【業種編】(1)

今回から「税務調査とそのこぼれ話」シリーズを受け、個々の業種における特徴を浮き彫りにした「業種編」をお話しします。
まず、今日は建設業です。
建設業とは、主として土木、建築の施工を中心とする業種で、いわゆるゼネコン、サブコンと言われるものがその代表です。歴史的には最も古くから行われている業種の一つで、トップのゼネコンを頂点にその下に数多くの下請業者を抱えるハイアラーキー構造をその組織的特徴としています。また、経営者も義理・人情を基本にした古いタイプが多いのが特徴です。
私の持論なのですが、税務調査で不正・ごまかしが発生する原因は、「その対象とする組織あるいは経営者のタイプに依存する」、あるいは「人的要素が大きい」ということです。
ですから、「組織・経営者を観察すれば不正が分かる」とも言えます。
また、1個の取引金額が大きく(少なくとも1000万円位から)、いくつかの取引を除外すれば目的は達成できることから、いわゆる「つまみ申告」(全ての取引から特定のものをわざと除外して申告すること)が圧倒的に多いのもこの業種の特徴です。
では、実際の調査ではどのようにやっていくのでしょうか?いままで「税務調査とそのこぼれ話」シリーズでお話ししたような請求書、会計帳簿、預金帳等のチェックは行い、全て問題はなかったとしましょう。
次に行うのは、請求書、納品書に記載された工事現場名が売上に反映されているかどうかのチェックです。つまり、調査対象者が建築工事業で主として使っている下請け業者が材木屋、大工、左官屋、電気工事等であったとします。そこで、これら下請け業者の請求書、納品書の工事名、工事現場名を全て書き出し、これらの工事が売上に上がっているかチェックするわけです。
次に、各工事現場毎の利益率のチェックです。特に、隣接している現場であれば人を融通しやすいので利益率は良くなるのですが、他と変わらないなら要チェックです。このような中で、利益率が特に悪い現場や下請け業者には反面調査(直接出向いて聞き取り調査をする)を行ったり照会文書を送付します。また、最近は更にその下の孫請け会社を利用しての不正も多いので、不審点があれば解明できるまで反面調査を続けます。
この段階で、ほとんどの方から間違いが出てきます。「請負契約書を作成しない」、あるいは「工事完成後形式上作成する」という慣行がその根本原因ですが、組織自体の「どんぶり勘定」的発想によるところが大きいと思います。
また、このようにして蓄えた資金がどこに回ったかも解明します。多いのは簿外預金、不動産の購入ですが、遊興費、政治献金等に消費していることもあります。もっとも経費としては認められませんので、課税対象となります。

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