税務調査とそのこぼれ話

税務調査とそのこぼれ話(2)

今日は、推定利益の計算方法についてお話しします。税務の現場では、いかに早くその納税者の方の利益金額(税法では「所得金額」と言います)を掴み、立証するかが勝負となります。
例えば今、ある納税者の方の申告額が年間1,000万円であったとしましょう。ところが、この計算の根拠があいまいで、ある別の方法で計算したところ年間利益額が2,000万円であったとします。この場合差額の1,000万円ははっきり言って脱税しているということになります。この2,000万円を推定できるか、またこの差額1,000万円を立証できるかが税務の職場では最も重要になります。
前者の2,000万円の推定は、一様ではありませんが、例を挙げて説明しましょう。
今回は、そば屋さんを例にしましょう。そば屋さん等の飲食業の場合は、売上高総利益率(粗利益率とも言います)はほぼ70%です。(実際には、そば一杯の製造金額と売価とを比較し、また商品構成の割合を考慮して、その店の実際の売上高総利益率を推定します)
例えば、今把握した仕入金額が1,200万円だったとします。売上高総利益率が70%(製造原価率は30%です)としますと、売上高は1,200万円÷0.3=4,000万円となり、総利益は4,000万円-1,200万円=2,800万円となります。販売費及び一般管理費が800万円としますと経常利益は2,800万円-800万円=2,000万円となります。
また、仕入金額が全額把握できない場合にはそば粉と売上単価との関係、それも無理なケースは箸の消費量から売上金額を推計し所得計算に結びつけるケースもあります。
つまり何らかのキーになる物量、金額を把握したら、それを元に売上金額を推計し、売上高総利益率、実際の販売費及び一般管理費を考慮して、真実と思われる利益金額を推定するわけです。このようなやり方は、ほぼ全ての業種に適応できます。
後者の立証では、個別に請求書、領収書をチェックする方法も取りますが、BS面(貸借対照表項目)を検討し、簿外の預金、有価証券、貸付金等の資産の増額を追うか、借入金の返済等負債の減少を追いのが効率的です。特に、ワンマン経営者の場合は、自宅の取得、子供の結婚、家族での旅行等の費用を、売上を除外した簿外資産でまかなっているケースが多く見られます。このような項目を発見することによって、今までごまかしてきた不正所得を一気に把握できるわけです。
マルサの女でも、金の延べ棒とか、仮名預金を把握して不正の全貌を解明とかというシーンがでてきますが、それはこのような簿外資産の把握のことを言っているわけです。
このような極端な話でなくても、例えば、昨年は息子が私立大学に入学したので300万円入ったとか、娘が結婚したので500万円必要だったという話はよくあります。利益を得る手段が事業でしかなく、借り入れもないとしますと、その家族は、生活費プラスその300 万円なり500万円の利益は稼いでいるということになります。費用でないものを払えるということは、利益があることと同義なのです。我々はそのように解釈するのです。
このような見方は、実際のビジネスの時にも使えると思います。利益があることが分かれば、その顧客は重要な売り込み対象者としてリストアップできるからです。

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石川税務会計事務所

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