税務調査とそのこぼれ話

国税の組織とそのこぼれ話(1)

私は、現在65歳(平成30年7月現在)の税理士、CFPです。税務当局に13年、税理士開業後30年と官側、民側どちらのこともよく分かる年代になってきました。また、国税退職後、ある民間企業の総務、経理、財務等の責任者をやっていましたので、税務以外の事も分かります。そこで、民間の、調査を受ける方から見て良く分からない、税務当局の組織とそのこぼれ話を幾つか御紹介したいと思います。
まず、今日は、組織の話をしたいと思います。皆さんは、料調という言葉をご存じでしょうか。それは、東京国税局の場合ですと、課税第1部内の5課(法人担当)と課税第2部内の3課(個人担当)の資料調査課というのが正式名称です。彼らは、査察(強制調査)とは違いますが、任意調査の中で査察と同じくらいの効果を上げることからミニ査察と呼ばれてます。査察が強制調査で、料調が任意調査であることを考えますと、料調がナンバーワンといえるかもしれません。彼らは、大規模な不正手口の解明(正に資料源開発)と主に大口の個人所得者の脱税を取り扱います。

数年前の10月のある日の午前10時頃、私の携帯電話の留守番電話に、あるクライアントさんから緊急連絡が入り、「先生、大変です。今日の朝、査察が入りました。本社、社長の自宅、工場、支店、銀行、取引先、全てに全部で100名以上の査察官が入っています。すぐ、来てください。」ということでした。
私は、同社の顧問として既に1年近く帳簿等をチェックしていたので、そのような査察が入るような仮装隠蔽は存在しない、このような入り方をするとすれば料調ではないかと思いました。
ただ売上が200億円位で、資本金も10億円という調査部所管法人のため、調査部はなぜ来なかったのかと思いました。
私は、すぐに電話で査察官は令状を持っているかどうかを確認しました。その結果、令状は無く、調査部と料調と所轄税務署の合同調査であることが分かりました。
後で聞きましたが、その理由は、この会社に子会社があり、いずれも資本金1億円以下の所轄税務署管轄の法人であったため、課税第2部(法人担当)の料調が資料解明で来たものでした。但し、このような3者合同調査というのは、局でも始めてということでした。
その結果、詳しくは申し上げられませんが、会社はみっちり絞られました。
彼らは、本当の意味でプロ中のプロです。ですから、普段から、堅実な税務判断と証拠保全を行うべきですし、疑問点は所轄窓口と詰めて行くことが肝要です。
ただ、税務の組織とその特徴を知っていれば必要以上に慌てる事は無いことをご理解いただきたいと思います。

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